羽黒山の香りを、一杯に。ノンアルコールジン「DEWA」が生まれた理由

羽黒エリア

公開日:2026年9月2日

2026年8月1日から、鶴岡市内の宿泊施設などで実証提供が始まったオリジナルノンアルコールジン「DEWA」。出羽三山の自然や文化を、香りと味わいを通して体験してもらうことを目指して開発された、アルコール0%の飲み物です。

その開発には、和歌山大学大学院観光学研究科 木村ともえ准教授、蒸留に一般社団法人コトハバの都丸絢氏、監修者として出羽三山神社・羽黒山斎館参籠所 伊藤新吉料理長が携わりました。

8月14日には、実際に出羽三山を訪れている参拝者の方々や報道関係者に向けて、開発者からDEWAの開発背景やこだわりを紹介し、試飲していただく発表の場を設けました。そこで語られたのは、単に「お酒の代わりになる飲み物」をつくるという話ではありません。

「この山の香りを、旅の記憶として持ち帰ってほしい」。

そんな思いから生まれた、DEWAの開発ストーリーをご紹介します。

2026年8月14日 羽黒山斎館にて

「詣でる つかる 頂きます」の旅に、新たな一杯を

鶴岡・庄内には、出羽三山を詣で、温泉につかり、食を楽しむという旅の文化があります。出羽三山を参拝した後、温泉や食を楽しみながら日常へと戻っていく「精進落とし」の流儀です。この地域に受け継がれてきた旅の楽しみ方を、現代の観光にもつなげようと、鶴岡では「詣でる つかる 頂きます」という旅のスタイルを提案してきました。

今回のDEWAも、その取り組みの一つとして始まりました。

開発のきっかけの一つとなったのが、「旅先で楽しめるノンアルコールの地域性ある飲み物が少ない」という気づきでした。和歌山大学の木村氏は、近年ノンアルコール飲料への関心が高まる一方で、旅館などで提供されるノンアルコール飲料には、ウーロン茶やジュースなどが多く、「その土地ならではのもの」が少ないことに着目されました。

「詣でる つかる 頂きます」という旅を考えたとき、アルコールを飲む人には日本酒など地域の味があります。一方で、お酒を飲まない人にも、この土地ならではの選択肢がもっとあってもいいのではないか。そんな発想から、蒸留を担う都丸氏に相談し「羽黒山のものを使ってつくれないか」というアイディアへと発展していきました。

さらに、もう一つ大切にしたのが「香り」でした。 ジンは香りを楽しめる飲み物。
木村氏自身、鶴岡を訪れるたびに「山のいい香り」を感じるといいます。だからこそDEWAは、単に「ノンアルコールで楽しめるジン」ではなく、その土地の香りを届ける“体験商品”として考えられました。

DEWAの顔になった「椿」

DEWAの特徴的な素材の一つが、羽黒山に自生する「椿の葉」です。

都丸氏が初めて羽黒山を訪れたのは4月。
その際、斎館で精進料理をいただき、伊藤料理長から羽黒山に自生する植物や山菜、そして山岳信仰について話を聞きました。

そこで知ったのが、出羽三山神社の神事で玉串を奉納する際、椿が使われているということ。一般的な神社では榊を使うことが多いなか、寒い地域でも冬に青々とした葉をつける椿を使うという、この土地ならではの文化でした。伊藤料理長のお話から、「出羽を象徴するような香りになるのではないか」と考え、椿をDEWAに取り入れてくださいました。

そしてもう一つ、重要な役割を担うのがクロモジ。都丸氏によれば、クロモジは香りがふわっと立ち、「羽黒山の森の澄んだ香り」を表現する植物です。そのほかにも、ジンの香りのベースとなるジュニパーベリーや、このほか地域にゆかりのある素材として笹や柿の葉、ヨモギ、キハダ、当帰、甘草など、10種類の素材が使用されています。

このうち、今回の提供に実際に使用されているのが出羽三山神社の協力のもと羽黒山で採取した椿の葉です。椿とクロモジをキーボタニカルとしながら、それぞれの植物が重なり合うことで、出羽三山を歩いたときに感じる森の空気感を表現しています。

椿の葉以外の素材については、今回は出羽三山で採れたものは使用されていませんが、使用されている素材は出羽三山にも自生している植物となり、間違いなく出羽三山のお山の香りであるとの太鼓判を伊藤料理長からいただきました。

「香りのグラデーション」をつくる

DEWAの開発で特に難しかったのが、香りのバランスです。都丸氏には、4月からさまざまなブレンドを試し、蒸留を重ねていただきました。一度の試作には約4時間、試作した数は数十回以上。椿の葉についても、天日干しにしたり、冷凍したりと、保管方法によってどのように香りが変わるのかを試しながら、羽黒山らしい香りを探っていきました。

さらに、完成したDEWAは「最初の香り」だけで終わらないように設計されています。原液にトニックウォーターを注いだ瞬間には、華やかな香りが一気に立ち上がる。一方で、食事をしながらゆっくり飲み、氷が溶けて少しずつ薄まっていっても、深い香りが残る。そのために、蒸留のバランスを何度も調整。

都丸氏が目指したのは、飲み始めの香りの華やかさと、時間とともに現れる深い香り、その両方を楽しめる一杯です。

蒸留に関するストーリーはこちら

ノンアルコールジン「DEWA」開発者インタビュー ―羽黒山を香りの一杯に閉じ込めるまで

「羽黒山を飲む」という体験

伊藤料理長が開発で大切にしたのも、DEWAを飲んだときに「羽黒山を思い出せる」ことでした。羽黒山を訪れる人には、自然を求めて来る人、参拝を目的に来る人、精進料理を楽しみに来る人など、それぞれ異なる旅の目的があります。

その中の一つとして、DEWAを飲んだときの香りや味わいも、旅の記憶として残してほしい。伊藤料理長は、「目で記憶で残しておくものと、この匂いで残していただくもの、どちらも一緒に残していただけたら」という思いで開発に参加したと話します。

最初に感じる香りは人によって違います。クロモジを感じる人もいれば、キハダを感じる人もいる。だからこそ、飲んだ人それぞれが「自分はこの香りを感じた」と思えることも、DEWAの魅力の一つなのかもしれません。

「羽黒山を飲む」

目で景色を感じ、鼻で香りを感じ、そして一杯の飲み物を通して羽黒山を感じる。DEWAが目指した体験を、端的に表す言葉です。

「参道を登ってきた時と同じような香り」

今回の発表の場では、実際に松島から出羽三山を訪れていた参拝者の方とそのご家族にも、DEWAを試飲していただきました。この方は、幼い頃から60年以上にわたって三山参りを続けているといいます。ご両親が始めた松島三山講の姿も見続けながら、ご自身も子どもや孫の世代とともに、長年にわたって出羽三山を訪れてきました。

そんな長年の三山参りの中で、DEWAの香りから感じ取ったのは、山を歩いたときの記憶でした。参道を登ってきた時と同じような爽やかな香り。何十年も前にご自身のおじいさんと石段を登った時の記憶が蘇るような香りであったといいます。

そして、一口飲んだ瞬間には、
「うわ、これうめえわ」
と思わず声が出たほど。
のどごしの良さと、口の中でふわっと広がる香りを気に入っていただきました。

「山を歩いたときの香りがする」という率直な感想は、DEWAが目指した「香りによって、山での体験を思い出してもらう」という思いとも重なります。長年この山を訪れてきたからこそ感じられた、印象的な言葉でした。

さらにお孫さんからも、率直な感想をいただきました。最初は「すごく飲みづらそう」というイメージがあったそうですが、実際に飲んでみると、「すっきり飲みやすかった」とのこと。

世代によって、旅の楽しみ方も、飲み物との付き合い方もさまざまです。
だからこそ、DEWAは「お酒を飲まない人のためだけ」の飲み物ではありません。
お酒を飲める人も、今日は飲まない人も。
それぞれのタイミング、それぞれの旅の過ごし方の中で、出羽三山を感じる一杯として楽しんでもらうことを目指しています。

香りは、旅の記憶になる

今回の発表を通して、開発者と参拝者の双方から繰り返し語られたのが「香り」と「記憶」でした。

山を歩いたときの空気。
森の中でふっと感じる植物の香り。
長い石段を登った後の感覚。

そして、何年、何十年後かにその香りを嗅いだときによみがえる、その日の記憶。

DEWAは、そうした目に見えない旅の体験を、一杯の中に残そうとしています。
アルコール0%だからこそ、運転をする人やお酒を飲まない人、年齢や体質などさまざまな理由でお酒を飲めない人にも楽しんでもらえる。
そして何より、出羽三山を訪れた人が、その土地ならではの香りとともに旅を思い出せる。

それが、DEWAが目指す一杯です。

2026年9月末まで、鶴岡市内で実証提供中

DEWAは2026年8月1日から9月末まで、鶴岡市内の宿泊施設を中心に、斎館、二の坂茶屋など15施設で実証提供を行っています。
今回の実証では、実際に飲んだ方の声をアンケートなどで集め、今後の本格提供に向けた検討につなげていきます。提供価格や販売方法などについても、今回の実証を通して寄せられる声を踏まえながら、今後検討の予定です。

出羽三山を歩いたあとに。
温泉につかったあとに。
食事とともに。
あるいは、旅から帰ったあとに、その香りを思い出しながら。

一杯のDEWAを通して、もう一度、羽黒山の森へ。
そんな新しい旅の記憶をつくる飲み物が、鶴岡から生まれました。

詳細はこちら

すーっとオリジナルノンアルコールジン「DEWA」