ノンアルコールジン「DEWA」開発者インタビュー ―羽黒山を香りの一杯に閉じ込めるまで
羽黒エリア
出羽三山で生まれた『すーーーーっと オリジナルノンアルコールジン「DEWA」』。 飲んだ瞬間だけでなく、旅から帰ったあとも、羽黒山を歩いたあの感覚を香りとともに思い出していただきたい——そんな思いから生まれました。
羽黒山参籠所「斎館」料理長・伊藤新吉さんの監修のもと、その香りを形にしたのが、薬草・ハーブ療術家で、クラフトジン「YOHAKHU」をプロデュースする一般社団法人コトハバの都丸絢さんです。DEWAでは、ボタニカルの選定から蒸留、ブレンドまでを担当。羽黒山の香りをどのように一杯へ表現したのか、開発に込めた思いとともにお話をしていただきました。
「詣でる つかる 頂きます」を香りにする

DEWAは、ボタニカル(植物)を蒸留して香りを抽出した、ノンアルコールジンです。アルコールではなく、香りを楽しむ飲み物だからこそ、その土地の風景や体験を香りとして表現できるのが大きな魅力です。
鶴岡には、「詣でる つかる 頂きます」という旅の楽しみ方があると伺いました。出羽三山にお参りし、温泉につかり、庄内の食を味わう。その旅の流れに、香りを楽しむ時間も加えられたらという思いから、DEWAは生まれました。
参拝を終え、宿で温泉につかり、夕食の時間にグラスを手にする。その香りから、歩いてきた杉並木や参道、山で深呼吸した瞬間をもう一度思い出していただけたらと思っています。
香りは、記憶を呼び起こす力が強いと言われています。旅の最中だけでなく、旅から帰ったあとにグラスを手にしたときも、羽黒山で過ごした時間や、そのときの気持ちがよみがえる。そんな「旅の記憶」を持ち帰る一杯になれば嬉しいですね。
ご先祖様に手を合わせた時間や、自分自身と向き合ったひとときまで思い出せるような、心の深いところに届く香りを目指しました。
羽黒山の石段を、もう一度

私が初めて鶴岡を訪れたのは4月でした。羽黒山の参道を歩いたとき、森の香りに包まれて、「この香りを表現できたら、鶴岡の魅力そのものを伝えられる」と感じたんです。
石段を一段一段登り、足元に気を配りながら、自分自身と向き合って歩く。そして、ふと立ち止まって大きく深呼吸をする。その瞬間に感じる澄んだ森の空気こそ、羽黒山らしさそのものだと思いました。
詣でるという体験は、ただ景色を見る観光とは少し違います。山に入り、体を動かし、心拍が上がったあとに大きく息を吸う。そのときに感じる空気や香りが、羽黒山で過ごした時間を深く記憶に刻んでくれます。
参拝した方なら、きっと誰もが経験するあの時間を、一杯の香りに閉じ込めたい。そんな思いで、「羽黒山を飲む」というテーマに沿って、石段を登った感覚や参拝したときの澄んだ空気を香りで表現しました。DEWAを通して、羽黒山で過ごした時間をもう一度思い出していただけたら嬉しいです。
羽黒山の椿を大切に。試作を重ねた、手作りの蒸留

DEWAには、十種類のボタニカルを使用しています。その中でも、もっとも大切にしているのが椿です。
椿は、斎館の伊藤料理長からご提案いただいた素材です。羽黒山の参道に自生し、出羽三山神社では玉串としても用いられてきた神聖な木。寒冷地では榊が育ちにくいため、一年を通して青々と葉を茂らせる椿が、その代わりに使われてきたと伺いました。その話を聞き、「羽黒山を表現するなら、この椿は欠かせない」と感じ、DEWAの核となるボタニカルにしました。

椿は、葉、花、つぼみをそれぞれ分けて何度も蒸留を試しました。葉は爽やかで青々とした香り、花はやわらかく華やかな印象があります。羽黒山の参道を歩いたときに感じた、みずみずしい森の空気をできるだけそのまま表現するため、最終的には葉の香りを軸に構成しています。

ほかにも、和のミントとも呼ばれ、参道の森を思わせるクロモジ、鶴岡の食文化を象徴する笹、柿の葉、ヨモギなどを使用しています。それぞれの植物が、出羽三山や鶴岡の自然、暮らし、文化につながり、羽黒山の石段を歩いたときの記憶を映し出すように選びました。
また、伊藤料理長からは、長年精進料理を提供してきた経験をもとに、羽黒山らしい香りや料理との相性についてアドバイスをいただきました。食事の時間に自然と寄り添い、精進料理をはじめとした鶴岡の食文化とともに楽しめる味わいを目指しています。

特に時間をかけたのは、香りの移り変わりです。グラスに注いだ瞬間に立ち上がる華やかな香りから、氷が溶けるにつれて現れる繊細で奥深い香りまで、何十回もの試作を重ねながらバランスを整えました。
蒸留はすべて手作業です。アランビックと呼ばれる昔ながらの銅製蒸留器を使い、お湯を沸かして生まれる蒸気で植物の香りをゆっくりと引き出します。一回の蒸留には約4時間。立ち上がってくる香りを一つひとつ鼻で確かめながら、抽出する量や仕上がりを丁寧に見極めていきます。
お酒飲む人も飲まない人も楽しめる一杯
DEWAは、2026年8月から出羽三山神社や鶴岡市内の温泉地、旅館などで味わっていただけます。旅館で召し上がるなら、参拝のあと、お風呂上がりに一杯。お酒を飲む方も飲まない方も、同じ時間に同じグラスを楽しんでいただけます。ご家族やご夫婦で、お酒を控えたい方が一緒でも、心配なく選んでいただけたら嬉しいです。グラスに顔を近づけたとき、羽黒山の石段や、詣でた道、深呼吸をしたあの瞬間が、ふと香りとともに戻ってくる――DEWAは、そんな一杯になればと思います。
都丸 絢
薬草・ハーブ療術家。一般社団法人コトハバ(群馬県高崎市)。ノンアルコールジンの開発を手がける。治療師として16年間、薬草やハーブを用いた施術を自宅サロンで行うほか、地域に自生する植物を生かしたハーブティーなどの商品開発にも携わる。群馬県みなかみ町のサウナ施設「MOOSKA DE STUBEN」で、セラピーや蒸留水を使ったオリジナルロウリュを提供。植物の香りを通して、その土地ならではの自然や風景を伝える活動を行っている。