

鶴岡でのロケ撮影は、平成14年に以下のとおり3回行われ、山田洋次監督をはじめ、主人公「井口清兵衛」役の真田広之さん、宮沢りえさん、丹波哲郎さん、岸惠子さん、大杉漣さん、吹越満さん、神戸浩さんが来鶴され、各々のシーンに出演されました。
また、毎回60〜80名のスタッフが来鶴されたほか、地元のエキストラとして、藤沢周平さんに縁のある湯田川地区の方々や湯田川神楽保存会のメンバーを始め、庄内ロケ支援実行委員会構成団体などから、総勢110名ほどが出演しました。
鶴岡ロケ概要
| 撮影時期 |
シーン |
撮影場所 |
| 3月20日〜26日 | 葬列シーン | 清水(羽黒地区) |
| ラストシーン | 中台(羽黒地区)、田代(櫛引地区)、松根「松根庵」(櫛引地区) |
| 若菜摘みシーン | 松根(櫛引地区) |
| 4月20日〜21日 | お祭りシーン | 湯田川温泉「由豆佐売神社」 |
| 5月28日〜29日 | 川シーン | 赤川(赤川市民ゴルフ場沖の中洲) |
| 柴刈りシーン | 清水(羽黒地区) |


4月ロケは天候に恵まれ、当初予定どおり順調に撮影が行われたものの、3月・5月ロケは、天候との折り合いが悪く、5月ロケは、当初予定されていた17日・18日の撮影が中止となってしまい、既に来鶴されていた真田広之さんや山田監督を始めとする俳優・スタッフの方々は、一路、次のロケ地へと移動していきました。また、3月ロケでも雨にたたられ、予定よりも大幅に期間が延びてしまいましたが、初日の20日は、逆に、余りにも天気が良すぎたため、葬列シーンが撮れませんでした。

3月ロケは、空模様に加え、月山・金峯山などの眺望も必要であったが、あいにくの天候が続いたため、ある日、山田監督とメインスタッフの方々で出羽三山神社にお参りを行いました。結果、翌日には、望まれた天候条件となったばかりでなく、早朝には季節はずれの雪が降り、葬列の道にはうっすらと雪が積もり、これ以上は望めない撮影舞台が整いました。ひたすら、出羽三山神社のご利益に感じ入った次第でありました。

5月ロケの撮影場所となった赤川の中州は、昨年秋の時点で撮影を予定していた河原の水量が今回は多かったため、新たに探し求めた場所でした。その中州は、川岸からみて良さそうなポイントであっことから、ゴムボートなどを使い渡ってみると、そこは絶好の撮影場所でした。そこで問題は、この中州にいかにして渡るかということでした。60〜70名のスタッフと撮影・照明機材などをいかに迅速に移動運搬するか。その結果、長さ25メートル、幅1メートルの仮設橋が誕生したのでした。

ロケ撮影には、3月、4月、5月とも毎回地元エキストラが出演し、総勢110名の方々が気持ちの入った演技を披露しました。お祭りシーンでの湯田川神楽保存会メンバー、湯田川地区住民の方々の合計70名を始め、毎回実行委員会の構成団体などから多くのエキストラが出演しました。のちに「撮影記念碑」も、由豆佐売神社の参道入口に建てられました。特に、川シーンでの死体役となったエキストラ2名については、5月下旬といえ、昼間よりも水温が一段と下がる夕刻迫る中、川の中に全身を浸し、幾度となく繰り返されたリハーサル、本テスト、そして本番、やり直し、本番・・・。山田監督からOKのかけ声が発せられた瞬間、期せずして、監督、映画スタッフ一同そして真田広之さんからの大きな拍手が赤川に響きわたりました。

撮影時の昼食は、ロケ現場で食べることが多かったため、温かいお汁、しかも地元の特産品を使ったものをスタッフの方々に提供したいということで、4月には、湯田川温泉旅館の女将さんたちが湯田川特産の孟宗を使った「孟宗汁」を、5月には、羽黒町商工会婦人部の皆さんが、特産の月山筍や山菜を使った味噌汁を提供しました。もし、ロケが8月にあれば、鶴岡特産の「だだちゃ豆」を提供できたのですが、それはまたの機会にとっておくこととしました。

宿泊先(東京第一ホテル鶴岡)から今回のロケ現場までは、いずれも車で15分〜20分程度の距離でしたが、電源車を始め、撮影機材の運送やスタッフ・俳優の移動などで、4t車、2t車、ワゴン車など10数台が現場に乗り入れました。また、4月ロケでは多くの地元エキストラが出演しましたが、そのメイクや衣装の着付けなどの関係で、映画スタッフは朝の5時頃から準備を行いました。今回の鶴岡ロケでは8シーンが撮影されていますが、各々のシーンでは、カット割と呼ばれるカメラポジションを変えての撮影が、数回から多い場合は7、8回行われています。それぞれのカット割ごとに、入念なリハーサル・テストが行われ、本番撮影についてもOKが出るまで何度も繰り返されます。従って、映画のスクリーン上では短時間のシーンであっても、その撮影に要する時間は、相当なものとなります。
いずれにしても、今回の鶴岡ロケで撮影された8シーンが映画全体に占める時間は僅かかもしれませんが、「鶴岡に吹く風や空の色の移り変わり、遠くに見える山々の姿、さらには先祖からの歴史をたたえた空気のようなものを大切にしたい」という山田監督の思いは、必ずやスクリーンから伝わってくると思います。
撮影風景はこちらから